Vol.85|
金剛 督(こんごう・すすむ/reeds)
text by Seiichi SUGITA




 「高木元輝こそが、唯一、本物のフリー・ジャズ・ミュージシャンだと思う」  2012年7月23~29日“金剛 督 7 Days@Bithces Brew”のスタートにあたり、金剛は、そのコンセプトをはっきりと語る。ぼくが1969年5月に創刊した『ジャズ』は、高木の大特集である。肉声とマルチ・リードのコミュニカシオン=交感に、とてつもない衝撃を覚える。とりわけ、パコ・ラバンヌのファッション・ショーにおける富樫雅彦(ds)とのデュオは鮮烈。いま、まさに新しいジャズが創出されている。
 『We Now Create』(ビクター)は、未だ斬新である。リーダーは、富樫、ユニットを支えるのは高木、高柳昌行(g)、吉沢元治(b)。なかでも、高木はいまも、ぼくの血をあわだてずにはおかない。
 高木(1939~2002)と金剛(1958~)が深くかかわったのは、晩年である。高木のテナー(アメ・セル)とバス・クラそしてフルートは、金剛がいまも吹いている。
 金剛は、浄土真宗の寺の跡取りとして生まれるが、音楽の道に進む。金剛はマルチ・リードのアーティストであるが、じつは、世界中のリペア職人のなかでも、5本の指に入るってご存知かな?横浜・元町の工房には、世界中から依頼される名器であふれかえっている。
 というのは、柳沢楽器でリペアの腕を磨いたのである。それだけではない。金剛の名を世界に知らしめたのは、あのカーブド・ソプラノを創り上げたからである。巨星ジョン・コルトレーンやスティーブ・レイシーが愛用したソプラノ・サックスは、こなすのが結構大変なのだけれども、カーブド・ソプラノハ、アルトやテナーが吹ければ、楽勝というスグレものというわけ。
 さて、今回の“7 Days”では、音楽監督的存在の林あけみ(p)のフォローが随所で光る。林の弾くバルトークやコダーイは、ぼくの大のお気に入りである。フリー・ジャズの原点は、案外ここら辺にあるのかも知れない。
 正直なところ、初めてセシル・テイラー(p)を聴いたとき、どうしてもバルトークがオーバーラップして仕方がばかったもの。
 “7 Days”は、朗読や声明のコラボも交え、金剛の人脈の広さと深さを今さらながら知らされる。ワガン・ンジャエ・ローズは、スティービー・ワンダーやローリング・ストーンズのツアーに参加したセネガルのパーカッショニストである。トーキング・ドラムとジャンベとの無限大の交感は、未だぼくの体内で共鳴し続けている。
 森 順治(reeds)、大沼志朗(ds)、ニール・スタルネイカー(tp)、角田 健(ds)、竹内 直(reeds)__。ニールは、ホワイトハウスのジャズ・ミュージシャンとして広く知られているが、現在は洗足音楽大学で教えている。日本人好みハイ・ノートの連発を良しとしない。メロディ・ラインがじつにやさしくなめらかである。モードとは、フランク・シナトラのように(女を口説くように)吹くことだそうだが、まさにそのお手本といっていいのでしょうか?
 角田 健は、つのだ・ひろのDNAを受け継ぐ鬼才。本来は、1日だけの出演予定であったが、ラストの竹内 直の夜にも参戦。7日間でもっとも激烈で突出した時空を構築する。金剛と竹内のデュオといえば、壮烈ですらある横浜<リトル・ジョン>のドキュメント(地底レコード)があるのだけれども、7月29日のデュオ、とりわけフルートとのコミュニカシオン=交感は、さらに壮絶で、さらに美しい。激烈な音群のカオスに静寂を見る。フリーキーなインプロヴァイズド・ミュージックに、こよなきメロディが浮上する。
 まぎれもなく、金剛 督は、高木元輝の志向をそのまま引き継ぐ正系である。
 金剛、林と静かに盃を交わす。
「高木さんが、最後に吹いてくださったのは、『ラビアン・ローズ』だったんですよ」と、林はふっと、つぶやく。

 

 ところで、“7 Days”@Bitches Brewは、2012年1月の竹内 直でスタート。加藤崇之(g)、本田珠也(ds)、纐纈雅代(as)、“MANI”(市野元彦g、田中徳崇ds、スガダイローp、坂田 明as,cl,a-clという錚々たる陣容。TSUTAYAより電子出版“eBOOKs”化したいということで、クルーがやって来る。2月は大由鬼山(尺八)、3月は纐纈雅代(as)。4月は坂田 明。5月は“Dedicated to 金井英人(b)。6月は林 栄一(as)と続ける。そして、8〜9月は“伽藍9Days”。
 日替わり定食というか、金太郎飴のようなライブハウスの辟易たるスケジュールに1本ぐらいは、楔(くさび)を打ち込んだと自負している。
 ただ、残念なことにTSUTAYAのクルーが完全に収録したのは、1月と2月のみ。3月4月は1回ずつ。何故、企画はボツになったのか?
 「製作費に1000万かけたって別にいいんですよ。ただ、3000万のアクセスがあればのハナシなんですよ」
 とは、製作責任者の弁。解り易いといえば解り易いんだけれども、ハナからジャズの“eBOOKs”でもうかるわけがないって気が付かなかったのでしょうか?
 アーティスティックとビジネスとは、そうそう簡単に合致するわきゃないってこと。





杉田誠一
杉田誠一:
1945年4月、新潟県新発田市生まれ。
1965年5月、月刊『ジャズ』、
1999年11月、『Out there』をそれぞれ創刊。
2006年12月、横浜市白楽に
cafe bar Bitches Brew for hipsters onlyを開く。
http://hakuraku-bb.tumblr.com/
著書に『ジャズ幻視行』『ジャズ&ジャズ』
『ぼくのジャズ感情旅行』。
http://www.facebook.com/Hakuraku.BB
及川公生のちょっといい音空間見つけた >>


♪ Live Information
open 7:00pm/show 8:00pm

10/01 Mon “モチ・ラボ” 望月孝(g, perc) 荒川マキ(vo) バナナUG(p)
10/02 Tue “モチ・ラボ” 望月孝(g, perc) 荒川マキ(vo) 後藤輝夫(ts)
10/03 Wed 吉野敦子(vo) 永井隆雄(p) 畠山芳幸(b) 黒崎 隆(ds)
10/04 Thu 土田晴信(org)
10/05 Fri “ケチャ〜ガムラン〜楽園ジャズ”成田有子(p) 河原厚子(vo) 他
10/06 Sat “JAZZ PROMENADE” <15:00~17:30>
大由鬼山(尺八) 大沢逸人(b)
<19:00~21:00>
章まりこ(vo)
JUNマシオ(perc) 他
10/07 Sun “JAZZ PROMENADE”
<15:00~17:30>
吉野敦子(vo) 阿部紀彦(p) 畠山芳幸(b) 黒崎 隆(ds)
<19:00~21:00>
JIBO(vo) 山見慶子(p) 遠藤光夫(g) JUNマシオ(perc)
10/08 Mon 吉良憲一(b) 中田 粥(p)
10/12 Fri 纐纈雅代(as) ソロ
10/13 Sat 須藤秀平(p) 大村太一郎(b)
10/14 Sun 五十嵐 晋(as) 他
10/15 Mon 鶴川普可(サクセロ)他
10/17 Wed 吉野敦子(vo) 永井隆雄(p) 畠山芳幸(b) 黒崎 隆(ds)
10/18 Thu 松戸志朗(ss) 時岡秀雄(ts)
10/19 Fri 大由鬼山(尺八) ソロ
10/20 Sat サトウアキラ(liquid light) 五十嵐 晋(as) 他
10/23 Tue 五十嵐 晋(as) 斎藤勇二(g)
10/25 Thu マルコス・フェルナンデス(perc) 他
10/26 Fri BULL松原(vo) 南野陽征(p)
10/27 Sat JIBO(vo) 山見慶子(p) 遠藤光夫(g) JUNマシオ(ds)
10/28 Sun “アンビエント〜ドローン〜伽藍”山内勝司(el-b) 井上史朗(el-b)
10/29 Mon 纐纈雅代(as) ソロ
10/31 Wed 鈴木マンモス学(p) 他

*『ジャズ批評』誌にて「JAZZ meets 杉田誠一」連載中。
 #1纐纈雅代 #2 大由鬼山 #3 金剛 督

問)Btches Brew 090-8343-5621(杉田)
http://hakuraku-bb.tumblr.com/
http://www.facebook.com/Hakuraku.BB

JAZZ TOKYO
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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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