COLUMN:JAZZTOKYO

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『クリス・ポッター／ザ・サイレンズ』
text by Kimio OIKAWA

ECM／ユニバーサル・ミュージックUCCE-1137

クリス・ポッター (ss,ts,bc)
クレイグ・テイボーン (p)
ダヴィ・ビレージェス (prepared p, celeste, harmonium)
ラリー・グレナディア (b)
エリック・ハーランド (ds)

ワイン・ダーク・シー
ウェイファインダー
ドーン（ウィズ・ハー・ロージー・フィンガーズ）
ザ・サイレンズ
ペネロペ
カリプソ
ナウシカア
ストレンジャー・アット・ザ・ゲート
ザ・シェイズ

録音：ジェイムズ A. ファーバー＠アヴァター・スタジオ NY、
２０１１年９月
プロデューサー：マンフレート・アイヒャー

従来のECMサウンドとは異なる展開に釘付け！

　テナー・サックスの力強い迫り出した音像にのけぞった。従来のECMサウンドとは異なる音像展開に釘付けだ。ジャズ、フュージョンで名声を上げたジェームス・ファーバーの録音である。サックスに多めのリバーブがなければ、ジェームス・ファーバーのジャズ録音の定番を聞く事になる。ピアノもそうだ。ピアノのアタックに骨っぽさを感じさせる音には濁りさえ押し通す力を感じる。従来のECMにはなかった空間表現もストレートに突っ込んでくる感じだ。透明なピアノはECMのブランドと定着したが、リバーブ付加があっても音像は濃い輪郭表現で骨太サウンドに圧倒される。
ドラムスのサウンドの描き方も輪郭線が濃い。しかも、全体を支配するバランス、音像の構築、ジェームス・ファーバーの個性が突き進む。
ヤン・エリック・コングスハウク（レインボウ・スタジオ、オスロ）との比較で、これほど個性が伝わる録音は他に無いと思う。すべての楽器のリバーブを極小にすれば、ジェームス・ファーバーの強烈な輪郭線のジャズが迫る。

CD評（多田雅範）：
http://www.jazztokyo.com/five/five972.html

及川公生：1936年、福岡県生まれ。FM東海（現・FM東京）を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」（ユニコム）。