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14日、予約してあった小谷美紗子の3年振りの新作『us』が届く。小谷美紗子トリオを名乗ったフォームをそのままに、彼女は彼女で普遍性がありながら、脱皮していく、年を経てゆく、リスナーであるわたしもともに、そういう対象化されないでぼくに語りかけている音楽。
かつて、彼女に眼差されてもいいように、生きよう、と、書いたことがある。
たいした寒さの中で仕事したわけでもないのに、靴下を脱ぐと親指が赤黒く凍えていた。寒さにも弱いし、暑さにも弱いし、体温調節能力がないカエルみたいなオヤジ。風呂を沸かして入ると、身体が茹で上がってきて紅潮して、血管が膨らんで親指もピンク色、茹でオヤジ。
湯舟につかってかかとをもんでいる。
父親の納棺の儀、納棺師は見事なものだった、足袋を履かせる左足をぼくが手伝った。かかとを持って、足があまりに軽くなっているのに絶句した。
子どもの頃に雨竜の町から生まれてはじめて町の外に出かけるときの、踏みしめた雪と景色と連れられる父親(祖父)の後ろ姿の話をきいたことが思い出されていた。75年間、どこをどう歩いてきたのだろう。銀行員は外回り、厳冬の北海道、パパはうちに帰ってきておれや妹の顔を見て幸福を感じていたかな。
Jazz Tokyo 年間ベスト2013、CDとライブを書いて、と。
月が無かったらナトリウムがこんなに洗われ出て海水が出来なかったとはね。身体は歩く海であるからにして。
イベントのご案内。
世界標準のテン年代現代ジャズ定点観測イベント、タダマス12。2013年の第4四半期(10月から12月)に益子博之が入手した音源からセレクトされたトラックを聴きあうひととき。今回は3度目の現代ジャズ年間ベスト発表も予定しています。
益子博之=多田雅範 四谷音盤茶会 Masuko/Tada Yotsuya Tea Party Vol. 12
new from New York Downtown scene in fourth quarter of 2013
2014年1月26日(日曜日) 18:30〜21:30 開場18:00
会場:喫茶茶会記(四谷三丁目) http://sakaiki.modalbeats.com/
料金 ¥1200 (1ドリンク付)
こんなカッティングエッジな精選音盤に連打されるイベントは無いよなあ、と、ホストであるわたしが書くのもなんだが、わたしはいつも当日手ぶらで登場しぶっつけ本番だ。タダマス11では「デリック・ホッジと菊地雅章TPTトリオは感覚的に同質だ」と発言したのだな、たしか。Mark Dresser は「古いでしょ?」、対してMary Halverson は「新しいでしょ?」とは、言えた。しかし。
このイベントに第一回から参加いただいている福島恵一さん(音楽批評)から今回も瞠目すべきレビューを頂戴した。
ブログ『耳の枠はずし』
「アンサンブルの解体/再構築の後に来るもの −「タダマス11」レヴュー Something Comes After Dismantling / Reconstruction of Ensemble − Review for "TADA-MASU 11"」(http://miminowakuhazushi.blog.fc2.com/blog-entry-255.html)
読んでいてテキストにガイストのように潜む清水俊彦の獰猛なシャープさを感じさせるいつもの福島節を音読するばかりなのだが、「先走った物言いになるが」の段落からのジャズ史を俯瞰するスケールに腰を抜かす。
『先走った物言いになるが、益子や多田がこの間ずっと追いかけているのは、新たなゲームの時代の到来とこれにより再生される即興共同体の姿ではないかという気がする。ビバップはモダン・ジャズ共同体のとびきりのアスリートたちが、極限的な演奏の加速と複雑化に向けて、命をすり減らしながら賭け金を吊り上げていく、コカインより効く究極のゲームだった。晩年のコルトレーンが繰り広げたのも、精神共同体を背景とした、極限的な加速と飛躍と充満と溶解に向けたゲームだったと言えるだろう。だから清水俊彦が指摘したように、コルトレーンの死は、熱病に浮かされたフリー・ジャズ共同体に冷水を浴びせかけることとなった。失われたルーツとしてのフォークロアと宗教性を常に探し求め、霊的共同体を志向したアルバート・アイラーの破滅は、そうしたゲームがもはや成立し得なくなったことを示しているだろう。崩壊した即興共同体から析出した個人によるパースナルな演奏語法の探求を、これまでのように象徴的な次元ではなく、まさに明示的かつ即物的なゲームの平面で編集しようとしたジョン・ゾーンによる「ゲーム・ピース」やローレンス・"ブッチ"・モリスが継続した「コンダクション」の試みは、こうした系譜の最後に位置している。』
そして、こう結ばれるのだ。
『そこに生み出される新たな音楽/演奏のかたちは、たとえどんなにこれまでの「ジャズ」と似ていなくとも、「ジャズ・ミュージシャン」にしか生み出し得ない演奏であることによって、それこそが新たなジャズの姿にほかならない。』
動かし難い記述だ。わたしの主張、「わたしの快楽主義は速度と浮遊の技法に反応しているだけである。ケニー・クラーク、エルヴィン・ジョーンズ、ロイ・ヘインズ、トニー・ウイリアムス、サニー・マレイときて、ジャック・ディジョネット、ヨン・クリステンセン、不可視化したポール・モチアンという流れで見ている。」との対比。
<track 294> Skylight / Lagarto from 『Lagarto』 Dec 2012
http://lagarto.bandcamp.com/
Andre Matos guitar
Demian Cabaud bass
Colin Stranahan drum
たとえばふと手にしたポルトガルのギタリスト、アンドレ・マトスのトリオ LAGARTO を聴くに、そこにはモチアンの革新以降である感覚が歴然としてあるもの。考古学的な立証にも。
マトスはトーマス・モーガン、テッド・プア、ノア・プレミンガー、サラ・セルパら、現代ジャズの馴染みのプレイヤーとのリーダー作を2010年にリリースしている。
この気持ちよさは、すでに懐かしいスタイルでもある。
<track 295> December Song / Jakob Bro (Love Land Records) 2013
モチアン・メソッドはクール・ジャズに源泉がある。
年末の鉄板現代ジャズ盤、なにか定位置となった感もあるヤコブ・ブロ(ギタリスト)の三部作、『バラッダーリン』『タイム』に続く、12月年末年始に相応しい『ディセンバー・ソング』。メンバーを列挙するだけでため息が出る。
Jakob Bro (Guitar/Composition) 1978-
Bill Frisell (Guitar) 1951-
Lee Konitz ( Sax) 1927-
Craig Taborn (Piano) 1970-
Thomas Morgan(Bass) 1981-
第3作はブロが当初から作曲を意図していたテイボーンが加わっている。第1作に叩いていたモチアンがそこにいるような、ゆったりとした回想に満ちているようにも聴こえる。
これはジャズを聴くというのではなく、空気の揺らぎを見つめるとか、香りや雰囲気や感情をともに運ぶとか、そういうもののように思う。ベース音の配置される感覚に、ほんとうの言葉を大切にしなきゃな、学ばされるな、と、とても音楽のこととは言えない感想に漂うばかりだ。
わたしが断ずる現代ジャズ世界ランキング1位トーマス・モーガンだ。いつまでトーマス・モーガン讃をやってるのか、と、言われても困る。
それにしても、このモーガン、菊地雅章TPTトリオでの録音はいつやるのだ。
世界は夜明けを待っている、
抽象的なジャズだの、難解なだの、ハードコアだの、聴くひとを選ぶだの、レコード会社までがそういうことを言っている場合ではないだろ。
今世紀の最もすばらしい芸術家が言った言葉ですけど、ね。
「芸術というのは、最後には作る本人がすべての責任を持つのではなく。
見る側がすべてを作りあげる。」と。
そうなると、今度は、見る側を、どのように作るかというほうに、まわらない限り、
芸術の永遠性が無いわけですね。
(荒川修作 NHK映像ファイル「あの人に会いたい」より)
<track 296> 灰とダイヤモンド / ももいろクローバーZ from DVD『JAPN TOUR 2013 5TH DIMENTION』 2013
作詞 / 只野菜摘 作曲 / 前山田健一
タガララジオ34で「今日の彼女たちに、明日はもう会えない」と書き。
昨年、今年と父母を末期ガンで送った。よくしゃべるおふくろで、新婚旅行の霧の摩周湖へぼくと妹と姪っ子とで温泉旅行に出かけたときに、初めての夜の話を滔々と話したのだった。妹が「兄ちゃん、兄ちゃんが出来た時のことの話だよ」と運転するぼくに促していたっけ。
歌うしおりんの頚動脈のふくらみ。
ミトコンドリアは、母性から遺伝する。ミトコンドリアはエネルギー生産や老化や免疫や生命の根幹に関与し、ミトコンドリアがらみのノーベル賞も10を超えている、生命はミトコンドリアの乗り物だという、そういうワタシって何だ?
コンサートの最後に歌われ、5にんのメンバーが花嫁のような笑みを見せて、ステージ後方へ向かい、立ち止まり、振り向く。なんでこんなに美しく、泣きそうになってしまうのだろう。
「夢から醒めてもみる夢が 胸を飾る 揺れる」
菊地雅章トリオ『サンライズ』に「醒めながら夢をみるための可能性のひとつのかたち」と書いた堀内宏公のテキストの連想から、そのサウンドのことを想う。
いつか桜井和寿と槇原敬之との対談で「ぼくたちにとって音楽とは宗教みたいなものだ」みたいなフレーズがあって、なるほどなあ、感動することも超えて、言葉も超えてて、神的体験としか言いようのないことが音楽にはあるよなあとは思っている。
「一緒にいないわたしたちなんて 二度と 想像もできないよ
ぶつかりながらも ここにいる奇跡は 偶然 じゃない すてきな意味が あるんだ」
と、れにちゃんがちからを込めて歌い、口を閉じてあごをひいてじっと見つめる。
みんな異なる人生を歩みながら、音楽のことを考えたり語ったり書いたり、どうして。
<track 297> Too Many People / Tim Christensen from 『Pure McCartney』 2013
憧れること。届かないものに届こうとする勇敢な冒険。
元ビートルズのポール・マッカートニー(71)さんが来日して大相撲観戦して懸賞金をかけて、懸賞旗はニューアルバムのデザインだったけどソロアルバム全部を並べてほしかったな。
加藤登紀子さんが同じ1942年生まれの男としてポールと小泉純一郎を記事にしていた。
日馬富士がCDを買いたいとコメント、なら、『RAM』(1971)を買いなよ!
ポールの最高傑作は『ラム』である。1曲目「Too Many People」の高揚は、アバの『アライバル』、フリートウッド・マック『噂』の1曲目と並ぶ世界三大1曲目とガールフレンドとの交換日記に力説した16さいのおれ。
発売当時の本作に対する酷評は、ビートルズ解散トピックに顔を出さないポールへのメディアによる悪態であったことは有名。
ティム・クリステンセン(元ディジー・ミス・リジー、知りません)という若者、筋金入りのビートルズマニアだそうで、ポールの70歳の誕生日2012年6月18日に『ラム』アルバムごとカバー公演してしまった、これがいい。アルバムの他に「Venus & Mars / Rock Show」や「Coming Up」まで演っている。
聴いていると、憧れの情熱が共有できるというか、オリジナルを聴き返してみると確かに本物なんだが、この切なさが無いのだ、「今」が無いのだ、だからつい何度も聴いてしまう、新譜のように。
彼の「Too Many People」
http://www.youtube.com/watch?v=SDZ8KhaUyQM
本家ポールの「Too Many People」
http://www.youtube.com/watch?v=0P_HKQGq730
<track 298> Great Zeppelin: Tribute To Led Zeppelin / Great White 1998
完全コピーついでに、こっちは本物にそっくり過ぎる、しかもツェッペリンがライブでは演ってなかった曲ばかり、この完成度、本物以上だ。track297と、異なるクールで職人芸なアプローチ。おれだって、こんなカバー作品なんてどうせと思っていたさ、ジャケもダサいし。ツェッペリン好きは、買って間違いなし。
01. In The Light
02. Living Loving Maid (She's Just A Woman)
03. Ramble On
04. Since I've Been Loving You
05. No Quarter
06. Tangerine
07. Going To California
08. Thank You
09. D'yer Maker
10. All My Love
11. Immigrant Song
12. When The Levee Breaks
13. The Rover
14. Stairway To Heaven
<track 299> Love For Sale (Cole Porter) / Cecil Taylor 1959
セシル・テイラーの京都賞受賞でJazz Tokyoで特集を組んだ。横井さんや稲岡さんたちのテキストを読むと、熱いものが伝わってくる。セシルのサウンドが脳内に響く。
今やダウンタウンの中心的存在となっているベーシストのウイリアム・パーカーを育てたのも、セシル・テイラーだった。
おいら、最初セシル・テイラーのピアノが全くわからなかった。稲岡さんが作った『アキサキラ』を国立のディスク・ユニオンの中古盤LP2枚組を学生の頃買ったけど。背伸びして、我慢して聴いてた。エネルギーだけじゃん!でもそれがいいのかなあ。なんて。
『ラブ・フォー・セール』を聴いて、セロニアス・モンクにイカレてしまって止まらなくなってしまったかのようなピアノの基本快楽構造が身体化してから、聴くようになった。
FMPの8CDボックスはいまだに聴けてないが。
おおー、今セッショングラフィー(http://www.efi.group.shef.ac.uk/mtaylors.html)を確認してたら、90年にFMPでウイリアム・パーカー、原田雅嗣のセッションがあったのか。ジョー・マネリ盤で知った原田雅嗣、コンダンクション・アンサンブルも聴いたなあ、アイスペインティング(http://www.kousakusha.co.jp/DTL/ice.html)というアートでも活躍している。鈴木昭男とのライブなんてのもある(http://miyakita.exblog.jp/16479244/)・・・
<track 300> enter / odani misako from 『us』 2013
小谷美紗子/New Album『us』Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=Eh6kC_5bobE
小谷美紗子 NEW ALBUM『us』 Trailer2
http://www.youtube.com/watch?v=PNaQuRsvZjQ
検索して、You Tubeして。ぼくらは相変わらず孤独だけれど、孤独でなければ深くは考えることができない。
ABCD包囲網とか、エネルギーという歌詞が耳にトレースされて、これは何の歌かと思う。
小谷美紗子の3年振りの新作を予約しておいたのが届く。この新作情報も、小谷の初期2作『PROFILE -too early to fell』『i』が2CD1セットで再発されたのも、アマゾンのおかげ、どちらも買う。でも、納税はどうなっているの?、アマゾン。
「僕らは検索が得意だから、諦めの無関心、揺さぶる、人差し指で、この国の夜明けを、捜し当てるよ、僕ら」
イントロからどこか歪んだ音像でベースとタイコが走り出す、リズムの力強さは小谷美紗子トリオのトレードマーク、これみよがしに尖ってみたり得意気な快走を示すようではない、彼女の歌に相応しい地に足のついたグルーヴ、でありながら、歪みの音像は現在の不穏への苛立ちを滲ませている。
歌詞がはっきりとは聞き取れないような、日本語の波に浮き沈みするような小谷の声。「NO NUKES NO NUKES」と歌われているとは歌詞を確認するまで判明しなかった。そして、それがこの表現の必然なのだ。
「検索が得意だから・・・」、特定秘密保護法案に対するもののようにも聴く。
シンガーソングライター、反体制の系譜、だなんて片付けられてたまるか。そうとも、作品は言っている。
<track 301> 心の旅 / TULIP 1973
You Tube > http://www.youtube.com/watch?v=2wbAJzhR69o
決定的に刻まれるのはバックのホルンの(違うかな?)郷愁だ。エレピ?の音色が歪んでいるのがやはり「正しい」。
何十年も経ってから、アレンジの奇矯さに殊更反応してしまう新鮮さは、懐メロ体験とは別の事態だ。
個人的な記憶 http://www.enpitu.ne.jp/usr/bin/day?id=7590&pg=20130311
<track 302> Ronald’s Rhythm / RJ Miller (Loyal Label) 2013
You Tube ではこのトラックが上がっていた。
RJ Miller - "Underwater Traveller"
http://www.youtube.com/watch?v=aSFaWlXw-Os
RJミラーは昨年アーロン・パークス・トリオで来日していたのだ。知らなかった。
菊地雅章がクリス・スピードやトーマス・モーガンとともにRJミラーの名を挙げてた。CDばかり追いかけるわたしには未知のドラマーだし、プーさんにはモチアン以外はむしろドラマーは居ないほうがいいのではないかと考えていた。
タダマス11が終わった会場で、不可思議なサウンドをみんなが聴いている。益子さんが、これは年間ベスト水準のモノだと断じている。ゲストの山本昌広さんも耳をそばだてている。
ウチに帰って何度か鳴らしてみたけど、うまく捕まえられない。ううん、と、ジャケのデザインから、あれ?これは Eivind Opsvik の変態室内クラシカルな名盤『Overseas IV』のLoyal Labelレーベルではないか!と認識したとたんに、サウンドが鳴りはじめた。ジャズ・ミュージシャンにしか果たせないポップ/ロックのフィールド。
自在に音楽を耳にしているつもりでいても、こうした受信の枠組みの設定で聴こえが変わってしまうこと。
<track 303> Beethoven : Diabelli-Variationen / Andras Schiff (ECM New Series 2294-95) 2013
みんな、アンドラーシュ・シフのことをどう思う?クラシック・ピアノ世界ランキングの第何位くらいに、判定している?歴代ピアニストとの位置付けは?こないだは平均律を聴いた。さすがの無重力奏法だ。
韓国のECMミュージック・フェスのトリ(9月7日)ではチョン・ミョンフンの指揮でアンドラーシュ・シフとハインツ・ホリガーが登場した、のは、クラシック界の王将と飛車と角を揃えてしまったECMレーベルと思ったわけだが。
ECMは反重力の革命を成し遂げている。
なんなんだ、この、シフのディアベッリの主題による変奏曲。完全に重力から自由になっているではないか。ベートーヴェンが楽譜に手書きしたときに、想定していない音楽の鳴り方をしている。レコード芸術は気付いているのだろうか?
おれはテイボーンやステンソンやビョルンスタに響くECMレーベルのピアノ美学を聴き続けてきた中で、新しいプロデューサー、サン・チョン Sun Chong が手がけたイェーヲン・シンやアーロン・パークスの重力の更新を感じた補助線があったから余計に驚きが大きい。
アンドラーシュ・シフはどこかでヴァージョン・アップしていた。それは、奏法や技法ではなく、ECMアイヒャーとともに歩み出ていた領域なのだ。アイヒャーはクラシック音楽全体の革命までしてしまっているのか。わたしは、無重力だの、反重力だの、としか、今言えないでいる、この感覚。
ヴァーチュオーゾたちはここ数年で入れ替わるだろう。革命とはそういうものだ。
<track 304> 沈黙の声 The Very Voice Of Silence / 黒田京子 (Airplane Label) 2013
黒田京子もまた、シフやアイヒャーが歩み出ている領域に気付いているピアニストのように思える。クラシックのテクスチャーではないし、ECMと同質と言っているわけではない。
友人のステレオで鳴らせてもらっていて、誰のピアノかさっぱりわからなかった。昔ジャズ批評を購読していた頃に黒田京子『Something keeps me alive』を聴いたことがある。別人のような気もしてくるが、当の昔の録音が押し入れのダンボールに入ったままで検証することができないでいるし、その必要は無いようにもこの演奏と録音は示している。
そう、何かは到来している、ピアニストがそれを追いかけている。調律師・辻秀夫の存在はこの鳴りが証明している。残響の空間に隠れそうになってもいる。ピアノの向こう側を覗き込むように、何度も聴き返している。
<track 305> Fiction / Matt Mitchell (PI Recordings) 2013
10月のタダマス11ラストに選曲されたのが、このマット・ミッチェル盤だった。ピアノと、ドラムのチェス・スミスのデュオ演奏。益子は、何かとてつもないものを抱えているピアノだ、と、いつもシャープで理知的な説明をする彼がそんなふうに語る。
おれも聴き始めて、くちあんぐり、血塗れになったクレイグ・テイボーンではないか!といつもの東スポ野郎なコピーを放つばかりで、立ち直れないくらいだ。タイコの変拍子と言って済むわけではなく、ヒリヒリするジャズの火薬の臭いまでさせている。
ギャング映画か!
この二人がティム・バーンのバンド「スネイクオイル」のリズム隊を担っている。
ECMで構築されたスネイクオイル盤(前回レビューした>http://www.jazztokyo.com/five/five1056.html)は、それは傑作だ。だがしかし、この残虐さや獰猛さはどこにどう収納してしまっているのだ?ライブで聴けばよろしい、の?
<track 306> Concerts - Bregenz / Munchen / Keith Jarrett (ECM 1227-29)
ピアノ盤が続く。
あまたあるジャレットのソロ、で、いちばん好きなのが『ブレゲンツ』。
最初の数音で、甘美な鼓動を感じる。止まらないでほしい、と、希う。
チャーリーパーカーやマイルスデイヴィスやセシルテイラーやアルバートアイラーで、「パン!」と空白になること、と、次元を問われるならば、音楽としてかなり世俗なもんであります。その世俗なもんはチューリップの「心の旅」と代替可能、だ、たしかに。
・・・あり?なに、言い訳じみたことつづっておるのかしらん。
ECMカタログ完成記念企画「11人のレビューワーにこっそりおききした偏愛ECMベスト11リスト」
http://homepage3.nifty.com/musicircus/ecm/e_hl/004.htm
で、わたしはトップに掲げた。これが、今年ようやくCD化された。「二度と戻れない青春というのはおそらくこういう音をしている。」、キースも今そんな心境でいるのではないだろうか。
『NO END』(http://www.jazztokyo.com/five/five1057.html)で辛辣なことを書いた(と、形容された)けど、ごめんね。マカルスキとバッハのヴァイオリン・ソナタを録音したんだよね、『レイディアンス』を弾けるキースならこの録音は間違いなく傑作だ、近いうちに必ず聴くから。
<track 307> ビバナミダ / 岡村靖幸 2013
You Tube >http://www.youtube.com/watch?v=hR5Pa6jxOSY
ジャケット画は会田誠。天才でごめんなさい。
DVD『秒速5センチメートル』のサウンドをアイフォンで流して、山崎まさよしの曲をモチーフにしたピアノソロ演奏やその背景音にうつつを抜かしている。しおりん似の、しおりん似の!二人の子持ち主婦が「あー、ダンナがハマって観たことあるー。ワタシ、だめー。」と、絶望的なコメントをいただいた午前3時でも、純愛について考えてしまう、52、アフラックのがん保険に入ったオヤジ。
現代ジャズもECMも役に立つものか。
リリースを知って、アマゾンじゃ間に合わなくて、練馬春日町や菊水元町のツタヤを3軒回ったけれど売っていなくて、千歳空港に向かう前に大通公園まで地下鉄に乗ってタワレコ札幌店で入手してきた。札幌の地下街を独りで疾走するのは高校生以来だ。「心の旅」を聴いて片思いの時田久美子ちゃんを想い、「君を連れ去って」どうしたかったのだ、12さいのおれ。34年も経った札幌の街は、カタチは同じなのに、ところどころに痕跡があるばかりで、悪夢に囚われているようだった。
純愛について考えている。
ぶーしゃかLOOP 岡村靖幸
http://www.youtube.com/watch?v=sTC65iC3oqI
岡村靖幸 対談&Live(2004.11.12)
http://www.youtube.com/watch?v=MYYODtt0V8E
今週行くつもりで行けなかった4日連続コンサート。次回は行くからね、みんな!
12/10 Tue
d-Factory vol.6 加藤崇之 高原朝彦 @喫茶茶会記
12/11 Wed
rabbitoo 『national anthem of unknown country』 CD先行発売LIVE!
市野元彦(g/electronics) 藤原大輔(ts/electronics)
千葉広樹(cb/electronics) 田中徳崇(ds) 佐藤浩一(pf/key/syn)
12/12 Thu
東京シンフォニエッタ第34回定期演奏会“固定-展開”
ニコラス・ツォルツィス:声のない…12人の音楽家のための
エリオット・カーター:クラリネット協奏曲
ジョナサン・ハーヴェイ:バクティ 室内オーケストラとエレクトロニクスのための
出演 板倉康明(指揮、Cl)、有馬純寿(エレクトロニクス)1、東京シンフォニエッタ
12/13 Fri
東京混声合唱団第232回定期演奏会
指揮:松井慶太
三善 晃:子どもの季節
酒井健治:Je est un autre II−委嘱作品再演−
湯浅譲二:カヒガラ/雲
シュニトケ:合唱協奏曲
小谷美紗子のコンサートには、みんな、行こう。
小谷美紗子Trio Tour 2014「us」
2014年4月8日(火)大阪・梅田Shangri-La
2014年4月10日(木)名古屋CLUB QUATTRO
2014年4月24日(木)東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
小谷美紗子弾き語りLive 火の川
http://www.youtube.com/watch?v=cnicwixycQY
小谷美紗子 - 手紙
http://www.youtube.com/watch?v=el2z34k-NQ4
謹賀新年。しおりんのしー。
Niseko-Rossy Pi-Pikoe:1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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