#76. ヨーヨー・マ
チェリスト
2013年10月29日
サントリーホール



ヨーヨー・マがひさびさにソロ・リサイタルを行った。それも2日間にわたってJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲を番号順に演奏した。そして6つの組曲の前に別の現代作曲家作品を演奏するというプログラムである。組曲第1番の前にA.A.サイグンの<パルティータ>、組曲第2番の前にはM.オコナーの<アパラチア・ワルツ>、組曲第3番の前にG.クラムの<無伴奏チェロ・ソナタ>、組曲第4番の前にP.ヒンデミットの<無伴奏チェロ・ソナタ>、組曲第5番の前にP.グラスの<オービット>、組曲第6番の前にチャオ・チーピンの<草原の夏>を演奏。通して聴くと古典から現代曲まで聴くことができるプログラミングである。演奏には技術的にも音楽的にも高度なものが必要とされるであろうが、ヨーヨー・マはそれらをまったく感じさせない演奏を披露した。そこにヨーヨー・マの円熟の凄さを感じ取ることが出来る。ヨーヨー・マにとってJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲の全曲演奏は3回目であるが、2回目の演奏から16年経ている。録音も2回行っているという。その演奏の円熟味をしっかりと味わうことが出来たであろうと思う。
10月29日の2日目のアンコールには、裏板に陸前高田の震災の奇跡の一本松の描かれたチェロを持って現れた。そのチェロを見て笑いのどよめきが起こった。それが何であるか分からなかったからだ。ヨーヨー・マは東日本大震災の廃材で制作したチェロであることを説明し、カザルスの「鳥の歌」を静かに弾き始めた。(因みにこのチェロの制作者は中澤宗幸氏である。以前紹介した黒沼ユリ子さんが演奏会で弾いたヴァイオリンも彼の制作である。) 終ると全員スタ ンディング・オベーションの拍手。無伴奏チェロ演奏の感動とはまた別の感動をヨーヨー・マは残していった。

林 喜代種:東京都日野市在住。80年代初めより現在までクラシック音楽を撮影。一時フォーク・ロック・ジャズ・ 民族音楽も。いま、落語・文楽に興味。(社)日本写真家協会会員

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