#78. 舘野 泉
左手のピアニスト
2013年11月10日
東京オペラシティ



「77歳のピアノ協奏曲」と銘打ったコンサートが行われた。フィンランドに20代後半から移り住んだ舘野 泉は世界を股に演奏活動を続けていた。その数は3500回以上に上る。2002年フィンランドでの演奏会の途中、脳出血で倒れた。そして右手が動かない半身不随になる。子息が左手のためのピアノ楽譜を探してくる。2004年「左手のピアニスト」として復帰。何よりも左手のためのピアノ曲が少ない。そこで、2006年「舘野泉左手の文庫」を設立。第一線で活躍する作曲家から数多くの作品が献呈された。2012年5月18日にスタートした「舘野泉フェスティバル〜左手の音楽祭」も2013年11月10日に全16回の演奏会の最終回を迎えた。この日は舘野泉の77歳の喜寿の日でもあった。最終回は全曲ピアノ協奏曲で飾った。フィンランドのラ・テンペスタ室内管弦楽団を野田如弘が指揮。コンサートマスターはヤンネ舘野。2004年以降に作曲された3曲が演奏された。ノルトグレン「死体にまたがった男〜小泉八雲の‘怪談’による」(2004)、吉松隆「ケフェウス・ノート」(2007)、そして新作初演は池辺晋一郎「西風に寄せて〜左手のために」(2013)である。リハーサルの終わる頃に舘野は左手を鍵盤の前に差し出し、中指と人差し指の第一関節が炎症でパンパンに腫れあがった指を見せてくれた。とても痛いヘパーデン関節炎だという。人差し指は2年前から、中指は3か月前からだ。しかし演奏ではその苦痛を微塵も見せない。演奏終了後花束と大きなバースデーケーキが舞台に登場し喜寿を祝った。ホールの2階ラウンジで関係者やファンが集い、演奏会の無事終了と77歳の喜寿に改めて祝杯。舘野泉の穏やかな笑みが印象的だった。「左手のピアニスト」になって9年。音楽の中で、僕は実感する「生きている!」と、最新の著書『ピアニスト舘野泉の生きる力』六耀社刊(¥1680)の中で述べ、また「僕は体全体を使ってピアノを弾いている。ピアノは指で弾いているのでなく呼吸で弾いているとも思う。心で呼吸するように音楽を続けることが出来れば、僕はこれからも生きていける」。

林 喜代種:東京都日野市在住。80年代初めより現在までクラシック音楽を撮影。一時フォーク・ロック・ジャズ・ 民族音楽も。いま、落語・文楽に興味。(社)日本写真家協会会員

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