COLUMN:JAZZTOKYO

『小曽根真＆ゲイリー・バートン／タイム・スレッド』
ユニバーサル・ミュージック　UCCJ-2112 ￥3,059（税込）

小曽根真(p)
ゲイリー・バートン(vib)

1. ファット・キャット
2. ストンピン・アット・B.P.C.
3. リーズ・パーティー
4. ソル・アステカ
5. イタルパーク
6. ハーツ・イン・ランゲンハーゲン
7. ポップコーン・イクスプロージョン
8. タイム・スレッド (for ビル・エヴァンス)
9. 組曲≪ワン・ロング・デイ・イン・フランス≫ Part I “リヨンの朝~アイ・ヒア・ア・トラブル”
10. 組曲≪ワン・ロング・デイ・イン・フランス≫ Part II “コルドン・ブルー”
11. 組曲≪ワン・ロング・デイ・イン・フランス≫ Part III “2台の可愛いフレンチ・カー～ザ・コンサート”
12. アイ・ヒア・ア・ラプソディ(Encore Track)

録音：ジョー・ファーラ＠アヴァター・スタジオ、NYC、2013年3月21~23日
ミキシング：ジョー・ファーラ＠MSR、NYC、2013年3月24~25日
マスタリング：グレッグ・カルビ＠スターリング・サウンド、NYC、2013年3月26日
プロデューサー：小曽根真

落ち着きのある両者のサウンドで、気持ちの救われたCD

アヴァター・スタジオのアコースティックそのままに、サウンドに骨太と容量の大きさを感じさせる優秀録音だ。
さすが、ジョー・ファーラ渾身の録音。芯の太さで勝負のサウンド。マイキングだけで到達させようと、エフェクトなどの仕掛けはなにも感じない、無垢を聞く。
ビブラフォーンの録音に付いて、内装の写真が録音時とすれば、これは驚異だ。しごく、当たり前のマイキング。変に凝らない方がいい、の見本かもしれない。
スタジオの響きを熟知して、楽器の響き、周辺の響き、これを混合させて創り出すサウンドの結果が、此処にある。マイクの個性を楽器特有の個性とミックスさせた結果がこれだ。
ピアノ低音部の重厚な音質、これが全てを支配する。しかも、鮮明で濁りを一切感じさせない。音を聴きながらピアノの位置、マイキング、微調整は行われたであろうが、これも写真で窺（うかが）う限り、神経質さは何処にも無い。
ジョー・ファーラは、用意周到な配置プランとマイキングで、リハの段階で手直しはなかったのでは。
落ち着きのある両者のサウンド。録音というテクニカルな表現が先に立つ印象の多い中で、気持ちの救われたCDである。

＊関連リンク
http://www.jazztokyo.com/live_report/report549.html
http://www.jazztokyo.com/five/five1012.html

及川公生：1936年、福岡県生まれ。FM東海（現・FM東京）を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」（ユニコム）。