Vol.91|
浦邊雅祥 (アルトサックス奏者)
text by Seiichi SUGITA




浦邊雅祥は歌舞く。
インプロバイズドであろうと、フリーであろうと、カッコよくなければ、駄目だ。
多くのマルチ・リード群像にあって、現在その鋭峰に位置するのは、竹内直である。最強のベース・レス・トリオを結成するとすれば、マルチ・リードの在を占めるのは、竹内直のほかには考えられない。
その竹内直をもってして「誰のようでもない」といわしめたのが、アルトの浦邊雅祥である。2014年10月26日。ついに浦邊雅祥の激烈にして心優しきDUOが現実のものとなった。
浦邊雅祥と竹内直は、ひとつの「うた世界」を共有する。
浦邊は、歌舞く。何たる夢幻にも似た、あやうくも美しい世界なのであろうか?

竹内も歌舞く。まるでブラウニーのようではないか。クラリネットであろうと、テナーであろうと、フルートであろうと、はたまたバス・クラであろうとも。こよなくうたう。その「うた」のありどころを、両者は、直視しつつも、共有する。
浦邊は、アルトのほかに、ギターとピアノも軽くこなす。ギターは、ぼくのプレゼント。フラメンコを弾かせたら、そうそう右に出るものは、いない。
浦邊はまた、金属フェチでもある。自らの肉体をいじめ抜くこともしばしばである。鎖でのどをしめあげ、地の底からしぼり上げるようなアルトを噴出させることも、決して希有なことではない。
さて、浦邊雅祥は1965年、東京生まれ。1985年(20歳)、アルトを手にする。以来、ソロ演奏を主として、活動中。
ひとはよく、浦邊と、阿部薫のことを比べたがるのだけれども、以て非なるどころか、まったく似ていない、ときっぱり断言しておく。阿部薫は、1949年、川崎生まれ。ぼくの知る限り、阿部が最大のメルクマールに達したのは、1969年、「天井桟敷」での劇団駒場「産業革命の歌」。以降、阿部は、まさにころがる石の如く風化していく。阿部が死去するのは、1978年(29歳)。

 

浦邊はいう。「ぼくは、阿部薫を意識したことなんて、一度もない」と。1985年、浦邊がアルトを手にしたのは、阿部が死去して7年も後である。
アルトを手にしたのとほぼ時を同じくして、アルトーやバタイユをガンガン出していた現代思潮社の川仁宏と出会う。川仁宏は、美学校の創設者である。以来、美学校との深いかかわりは、現在に至る。なかでも、加藤哲(人形サーカス)は別格の存在となる。
浦邊雅祥が、初LPをものにするのは、1996年。明大前「モダーン・ミュージック」が主宰するレーベル、PSF(サイケデリック・スピード・フリーク)より、ソロを出す。「キッド・アイラック・ホール」でのライブである。
ほかに、スタジオ録音。『無線・伊豆』がある。浦邊雅祥は、三上寛(vo,g)の“惨社”に、頭脳警察の石塚俊明(ds)と参戦している。
いま、浦邊雅祥が、最も深く持続しているのは、オブジェ作家、石田百合との対峙である。オブジェする肉体との交感である。
いま。見事に歌舞く、浦邊雅祥に注視されたい。

■浦邊雅祥@Bitches Brew for hipster only
9月21日(日)
  〜26日(土)
浦邊雅祥6Days @Bitches Brew
 9月21日(日) 浦邊雅祥+α
 9月22日(月) 浦邊雅祥+忘八門土(E-guitar)デュオ
 9月23日(火・祝) 浦邊雅祥
+風巻隆(Percussion)デュオ
 9月24日(水) 浦邊雅祥
+田山メイ子(Butoh dance)デュオ
 9月25日(木) 浦邊雅祥ソロ
 9月26日(金) 浦邊雅祥
+竹内直(ts,cl,b-cl,fl)デュオ
9月29日(月) 浦邊雅祥
+石田百合(身体、Object)デュオ
10月27日(月) 浦邊雅祥(as,etc) ソロ
■纐纈雅代完全復帰!
10月10日(金) 纐纈雅代(ts)ソロ
■ジャズ・プロムナード
10月11日(土) 浦邊雅祥(as,etc)石田百合(身体)
木村由(dance)
10月12日(日) 蜂谷真紀(p,vo)
■急遽決定!
11月3日(祝) 坂田明(as他)蜂谷真紀(p,vo)

その他、スケジュールは随時、Facebookで発表しています;
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杉田誠一
杉田誠一 Seiichi Sugita
1945年4月新潟県新発田市生まれ。獨協大学卒。1965年5月月刊『ジャズ』、1999年11月『Out there』をそれぞれ創刊。2006年12月横浜市白楽にカフェ・バー「Bitches Brew for hipsters only」を開く。著書に、『ジャズ幻視行』『ジャズ&ジャズ』『ぼくのジャズ感情旅行』他。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


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「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

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#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
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#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

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