フランスの巨匠、ピアニストのエリック・ハイドシェックが２０１３年１１月に来日リサイタルを行った。フランスの伝統を受け継ぐピアニストである。今回は７７歳の記念演奏会で、日本流にいえば、“喜寿記念演奏会”である。２年振りの来日で味のある演奏を聴かせた。１９３６年フランス北部の古都ランスに生まれる。生家は古都ランスを代表するシャンパンの名門シャルル・エドシェック。そのフランスの伝統は、ハイドシェックの立ち居振る舞いに、音楽に受け継がれている。フランスのエスプリが濃厚に身に付いている。撮影のかなり前から身なり・雰囲気を整えて待機していてくれたそうである。舞台に現れた時にはもうハイドシェックの世界である。フランスの名ピアニストにして名教師として名高い師のアルフレッド・コルトーに、その才能を認められたのである。師の死の年（１９６２）まで指導を受け往年の巨匠のピアニズムを今に伝える貴重な存在である。同門のピアニストに遠山慶子がいる。毎年夏８月に行われる「草津アカデミー」には何度も講師として招かれている。受講生には伝統のエスプリを無言のうちに伝授している。貴公子然としたピアニストも気に入らなければ“かんしゃく”を起こすし、落ち込むこともある。上手くいけば天真爛漫。非常に自然で素直で人間くさいところがある。今回も聴衆はフランスの香り高い芳香を存分に味わうことが出来た。最新のCDは『ハイドシェック／子供の情景』（KPC20 ￥２８００／キングインター ナショナル）。