Vol.92|
蜂谷真紀(ボーカル、ピアノ)
Maki Hachiya, vocal,piano
photo & text by Seiichi Sugita




 2014年9月23日(秋分の日)。急に、パリから帰国中の沖至(tp)が、Bitches Brewに出演することとなる。9月21日〜26日は、浦邊雅祥(as,etc)7Daysのため、昼の部ということに。
 新作『nobushiko 野武士孝』(improvising being ib01)を聴く。
Paris, 12/15, 2009
Benjamin Duboc(double bass)
沖至(tp,flgh,fl,tubes,percussions)
凄い。華燭を排したともしびだけがここには存在する。
「野武士孝」には、まず野生尺八の大由鬼山を指名。約40年ものパリ滞在で培われた日本人ならではのエスプリに対して蜂谷真紀(vo,p)を配す。そして、もうひとり、世紀末のウィーンでデビューした高樹レイにも声を掛ける。この布陣は、予想だにしなかった沖至の自己表出をスポンティニアスに誘引する結果となる。
 とりわけ、蜂谷真紀のボイスとボーカリゼイションのユニークなジニアスがきわだつ。
 くしくも10月末、“PORTA CHIUSA”:Paed Conca(cl)、Hans Koch(cl)、Michael Thieke(cl) meets “メビウスの鳥”:Huges Vincent(cello,el-cello)、 蜂谷真紀(vo,el-vo)でツアー。
 その後、11月3日(文化の日)@Bitches Brewで、蜂谷真紀は、坂田明(as)、大由鬼山(尺八)と渾身の対峙。
 そして、“メビウスの鳥”ヨーロッパ・ツアーを貫徹し、帰国後12月14日〜20日/蜂谷真紀7Days@Bitches Brewを敢行する。
 さらに、さらにである。12月22日には、纐纈雅代(ts)と交感する@Bitches Brew。
 蜂谷真紀ほど、不可視の空間を創出するジニアスをほかに知らない。その場にいた者のみが、そのユニークな空間を共有しうるのだ。
 いつもきっかけは、ほんのちょっとしたさりげない1音であったり、日常であったりする。そこからすでに、リスナーと蜂谷との、あるいは、蜂谷自身のうた衝動とのコール&レスポンスが始まる。さまざまなフレーズの片鱗が交錯し、やがて、ひとつのメロディーが浮遊する。それが、誰もが一度は口づさんだ、はたまた、エリントン・メドレーだったりするときには、慄然すら覚える。
 蜂谷自身は、自ら男だと言い切るけれども、ぼくが「慄然すら覚える」のは。そのエロスに対してである。
 うたとは、終生のエロスだとすれば、蜂谷真紀のうたは、「野武士孝」でふりしぼられた沖至の1音と通底する。
 そしていま、ひそかにぼくは、もくろむ。進化し続ける世紀末ウィーンのディーバ、高樹レイのスタンダードと、蜂谷真紀との交感=コミュニカシオンを。
 12月18日(木)、誰も体感したことのない「終末のエロス」が現実のものとなる@Bitches Brew。
“メビウスの鳥”は終末のうた=エロスを運ぶ。

 

SCHEDULE@Bitches Brew(10/19 現在)
11月3日
(文化の日)
蜂谷真紀(vo,p) 坂田 明(as) 大由 鬼山(尺八)
11月 4日(火) 本田ヨシ子(vo) 長沢 哲(ds)
11月 5日(水) 西村知恵(vo) 杉山泰史(g)
11月 6日(木) M★A★S★H+北沢直子(fl)
11月 7日(金) 「天地の鼓動・吹き渡る風」
島田 透(ds) 有永道人(チューバ)
11月 9日(日) 木村 由(dance)
11月10日(月) 新井陽子(p)
11月11日(火) あうん:
赤い日ル目(vo,micro KORG)
Tommy Tommy(ガシュット・ノイズ・マシーン)
11月13日(木) HENNA TRIO:
萩原 優(as) 小金丸 彗(g) 鈴木悠平(ds)
11月14日(金) 纐纈雅代(ts)
11月15日(土) 三上 寛(vo,g)
12月14日(日)
 〜20日(土)
蜂谷真紀7Days
12月22日(冬至) 蜂谷真紀(vo,p) 纐纈 雅代(ts)

その他、スケジュールは随時、Facebookで発表しています;
www.facebook.com/profile.php?id=100004748858266
www.facebook.com/Hakuraku.BB?fref=ts

杉田誠一
杉田誠一 Seiichi Sugita
1945年4月新潟県新発田市生まれ。獨協大学卒。1965年5月月刊『ジャズ』、1999年11月『Out there』をそれぞれ創刊。2006年12月横浜市白楽にカフェ・バー「Bitches Brew for hipsters only」を開く。著書に、『ジャズ幻視行』『ジャズ&ジャズ』『ぼくのジャズ感情旅行』他。

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