COLUMN:JAZZTOKYO

『三木俊雄フロントページ・オーケストラ／ストップ＆ゴー』
55 Records　FNCJ-5557

１，ストップ＆ゴー
２．パピヨン
３．エッシャーズ・ヴィジョン
４．スリープ・ライク・ア・ベイビー
５．クォンタム・リープ
６．マチルダ
７．サスペント
８．バイ・エニー・モーンズ・ネセサリー
９．イースト・プレイン
10．イフ・アイ・トールド・ア・ライ

三木俊雄（leader, ts）近藤和彦（as）浜崎航（ts,ss,fl）松島啓之（tp）奥村晶（tp）片岡雄三（tb）山岡潤（euphonium）福田重男（p）上村信（b）柴田亮（ds）岡崎好朗（tp＝ゲスト）

録音：2013年７月22、23日東京クレッセント・スタジオ
録音エンジニア：ニラジ・カジャンテ
プロデューサー：三木俊雄

アレンジ・演奏の素晴らしさを、的確に自然体で捉えた優秀録音

ビッグバンドのマスと、ソロ楽器のピンポイント音像の変化の絶妙バランスが心地良く、小音量でも快適に聴ける。技術的な主張をまったく感じさせない、暖かみのある音色を捉えた技に感服。一体、どうやってこのサウンドを捉えたかを、潜入取材したかったくらいだ。マイキングの状況を写真で見る限り、何も際だった仕掛けは見あたらない。しかし、温暖な感触の音質は、もっちりしていて耳に心地よい。管楽器全体に高音域が尖っていない。肉厚、重厚な感触は気持ちいい。空気の隙間を通り抜けた、オンマイクだが耳あたりは柔らかい、不思議なサウンドに酔う。
ビッグバンドが弾けている空間に、ピアノにリバーブ処理があって、オシャレな空間感。だれも思いつかない音像処理だが、妙に、いい感じだ。そのピアノの音質にも注目。骨っぽく堅い音色に仕上げているにも関わらず、帯域の狭さを感じさせない不思議な仕上がり。
アレンジの緻密さを「フェーダー」ワンステップ単位のコントロールで仕上げた、楽器バランスの見事さ。ビッグバンドのマスの中に緻密なサウンド構成が、浮かび上がる。

＊ CDレヴュー
http://www.jazztokyo.com/five/five1040.html
＊フロントページ・オーケストラ／公式HP（試聴可）
http://mikitoshio.com/fp-orch/fp-orch.html

及川公生：1936年、福岡県生まれ。FM東海（現・FM東京）を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」（ユニコム）。