COLUMN:JAZZTOKYO

『マリア・シュナイダー・オーケストラ／ライヴ・アット・ザ・ジャズ・スタンダード～酒とバラの日々』

Tim Ries (as,ss,cl,fl) Charles Pillow (as,ss,cl,fl) Rich Perry (ts,fl) Rick Margitza (ts,fl) Scott Robinson (bs, bass-s,cl,b-cl,cl,fl) Tony Kadleck (tp, flgh)
Greg Gisbert (tp,flgh) Laurie Frink (tp, flgh) Ingrid Jensen (tp, flgh) Keith O'Quinn (tb) Rock Ciccarone (tb) Larry Farrell (tb) George Flynn (b-tb) Ben Monder (g) Frank Kimbrough (p) Tony Scherr (b) Tim Horner (ds)

1. Lately
2. The Willow
3. That Old Black Magic
4. My Ideal
5. Last Season
6. Comecar de Novo
7. Days of Wine and Roses
8. Over the Rainbow
9. Bird Count

Produced by Mari Schneider snd David Baker
Recorded live to digital two-track by David Baker at the Jazz Standard, NYC, January 2000
Assisted by Katsuhiko Naito

MSO をDavid Baker はこう録った！

NYCのクラブJazz Standardでのライブ収録。しかもダイレクト２チャンネル録音。デイヴィッド・ベイカーの本領発揮の名録音である。
ライブ空間がもたらす容積の包容力が，２チャンネル録音の真骨頂に息吹を与える。
このサウンドの勢いはダイレクト２チャンネルの賜（たまもの）だ。ベイカー流儀を学んだ私も、これを聴くと心の底辺にあった謎が解ける。
ビッグバンドの溌剌とした勢いを、技術上の容量一杯に聴くことができ、痛快だ。トラックダウンを経ないこの手法は音に勢いがある。ベイカー流儀と私の経験値から回答を得たディスクだ。
ライブの難点、「かぶり」が、ここでは生きている。ドラムス、ベース、が個別に浮かび上がらず、距離感、質感を満たす音像を創り出す。計算づくのマイキングとミックス技術が背景にあると確信をもって言える。
管楽器とリード楽器の繊細さに優先する骨太のサウンドがたまらない。ビッグバンドの魅力の一つ、張り裂けるサウンドを実感で味わい、音像を覆い尽くす隙間のない濃厚さに拍手を送りたい。
故人となった今、この様な濃厚な音像を創り出す巨匠の音を聴けないことが誠に残念。

及川公生：1936年、福岡県生まれ。FM東海（現・FM東京）を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」（ユニコム）。