#90. ペペ・ロメロ
ギタリスト
2014年5月18日 浜離宮朝日ホール
2014年5月20日 トッパンホール



クラシック・ギターの巨匠ペペ・ロメロが8年年振りに来日した。演奏会には注目すべき2つのプログラムが用意され、ギターファンを魅了した。一つは1994年と2012年に発表したアルバムからの<2つのスペインの夜>、もう一つは<トーレスでタレガを弾く>である。<2つのスペインの夜>はスペイン音楽を代表するソル、アルベニス、ロドリーゴ、トゥリーナ等の曲を2つのアルバムの中より抜粋して演奏した。使用したギターはペペ・ロメロの息子のペペ・ロメロJr.製作。豊かな音量でギターの魅力を存分に聴かせた。また<トーレスでタレガを弾く>では1856年アントニオ・デ・トーレスが製作した銘器「メープル」を使用。このギターはギター奏者の父セレドニオから受け継いだもの。それには次のようなエピソードをペペ・ロメロは語っている。1969年の冬、父セレドニオとぺぺは演奏旅行でコロラドに行くことになった。猛吹雪の中を運転していた。先導はぺぺで妻と子供が同乗、後続の父セレドニオの車には母が乗っていた。峠でペペの車がスリップし、11000フィートを超えるローブランド峠で滑り落ちてしまった。父と母は目の前で見てしまい、もう駄目だと思ったらしい。幸運にも巨大な樹に引っ掛かり一命をとりとめた。父が叫ぶ「ペペ、大丈夫か」、それに応える「大丈夫、手は何ともないよ」。次のパパの言葉が最高だった。「無事に戻ってきたら、トーレスをお前にやるぞ」と。そうして歴史的銘器のギター「トーレス」はいまペペ・ロメロの手元にある。そのギターで奏でられるタレガの名曲『アルハンブラの想い出』は聴衆の心に伝わっていく。タレガも複数のトーレスギターを愛用し、それで作曲した。ペペ・ロメロは1944年3月スペインのマラガに生まれる。父セレドニオに師事。スペインギターの真髄を継承する最後の巨匠と言われている。ロメロ一家の父セレドニオと3人の息子たち(長男セリン、次男ペペ、三男アンヘル)によるギター・カルテット「ロス・ロメロス」はクラシックとフラメンコのテクニックを融合したスペインギターを世界的に広めた。ぺぺはその中心的存在だった。来日も果たしている。ペペ・ロメロは今回の2つのプログラムで素晴らしいスペインギターの世界を印象づけた。またペペ・ロメロによるトーレスギターの新たなプロジェクトも考慮中とか。

林 喜代種(はやし・きよたね Kiyotane HAYASHI)
東京都日野市在住。80年代初めより現在までクラシック音楽を撮影。一時フォーク・ロック・ジャズ・ 民族音楽も。いま、落語・文楽に興味。(社)日本写真家協会会員

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追悼特集
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
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#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


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#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

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