COLUMN:JAZZTOKYO

『キース・ジャレット／バーバー：ピアノ協奏曲、バルトーク：ピアノ協奏曲第3番他』
ECM／ユニバーサル・ミュージック
UCCE-2089　￥2,808（税込）

サミュエル・バーバー：ピアノ協奏曲 op.38
ベラ・バルトーク：ピアノ協奏曲第３番
キース・ジャレット：東京アンコール

キース・ジャレット(pf)
デニス・ラッセル・デイヴィース指揮ザールブリュッケン放送交響楽団
秋山和慶指揮　新日本フィルハーモニー・オーケストラ

録音：
1984年6月3日ザールブリュッケン・コングレスハレ
トーンマイスター：ヘルムート・ファックラー
バランス・エンジニア：ヘルムート・ダヴィッド
1985年1月30日東京・五反田簡易保険ホール（ゆうぽうと）「東京ミュージック・ジョイ」
エンジニア：不明
マスタリング：クリストフ・スティッケル＠MSM Studios
エグゼクティヴ・プロデューサー：マンフレート・アイヒャー

８０年代のワンポイント＋補助マイク多用とミックス技術による音像明確化の手法を具現

ピアノの音像が色濃く存在感を示しながら、オーケストラの鮮明な音色が覆い被さる。ワンポイント＋ソロ扱いのミキシングとは全く異なる音場構成である。綿密な各パートの補助マイクを使った音像が安定感を提供する。しかし、遠近感が損なわれるものではない。管楽器、木管楽器、の遠近感の表現は緻密なマイキングとミックス技術のテクニックで解決。
これらのサウンドに共通して言えるのは、当時の録音技術手法のワンポイント＋補助マイク多用。ミックス技術によって音像を明確に表現する手法だ。音像が明確に現れる音楽表現は、今時の表面活性材的な音場感の造りと、録音の在り方の違いが聴ける音源でもある。ジャズに共通している感じがする。
弦楽器群に高音部の強調があるのは意図的な仕掛けか。
日本公演の音源がある事にも興味を感じた。ホールの特質が音質に深く関わるからだ。ピアノの音像の際立ちが少しソフトな印象。

関連リンク（CD評：神野秀雄）；
http://www.jazztokyo.com/five/five1206.html

及川公生　Kimio Oikawa
1936年福岡県生まれ。FM東海（現東京FM）技術部を経て独立。大阪万国博・鉄鋼館の音響技術や世界歌謡祭、ねむ・ジャズ・イン等のSRを担当。1976年以降ジャズ録音に専念し現在に至る。2003年度日本音響家協会賞受賞。東京芸術大学、洗足学園音楽大学非常勤講師を経て、現在、音響芸術専門学校非常勤講師。AES会員。