ジョン･リルのキャリアは５０年以上に及ぶ。１９４４年生まれの７０歳である。２年半ぶりの来日。この日は＜ベートーヴェンの傑作ソナタの夕べ＞と題して、ピアノ･ソナタ「第８番／悲愴」、「第２１番／ワルトシュタイン」、「第２２番」、「第２３番／熱情」の４曲を演奏。ドイツ的な重厚な演奏でなく、ちょっと洒脱なところもあり、かつダイナミックな演奏の中に落ち着いた雰囲気で聴く者を楽興の世界へ引き込んでいった。何といってもヴィルヘルム・ケンプの薫陶をうけベートーヴェンの精髄を継承した世界屈指の“ベートーヴェン弾き”の力量をいかんなく発揮した演奏を披露。９歳で最初のソロ・リサイタル、１８歳でラフマニノフのコンチェルト「第３番」をエイドリアン・ボールト指揮で演奏。続いてベートーヴェン｢皇帝｣でロンドン・フェスティヴァル・ホールにてロンドン・デビュー。１９７０年チャイコフスキー国際で優勝し一躍脚光を浴びる。世代を代表するピアニストとして不動の地位を確立する。５０を超える国でリサイタルを、またソリストとして世界のトップ・オーケストラと多数共演する。７０を超える協奏曲をはじめ幅広いレパートリーを持つ。なかでもベートーヴェンの解釈では高く評価されている。イギリス、アメリカ、日本でピアノ・ソナタ全曲演奏会シリーズを開催。またEMI にベートーヴェン のピアノ協奏曲全曲を録音、AVSにベートーヴェンのピアノ･ソナタ全曲を録音している。７０歳の記念の年である２０１４年はイギリスでベートーヴェンのソナタ全曲シリーズを、モスクワ、北京、ウィーンなどでベートーヴェンのコンチェルトを、バースデーコンサートとしてロイヤル・フェスティヴァルホールでロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とラフマニノフのピアノ協奏曲「第３番」を弾く。その模様はBBCラジオにてライブ放送されるなど更なる活躍をみせている。１９７７年、２００５年大英帝国勲章を授与される。ロンドン在住。

　 　

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