現代のロシアを代表する最後の巨匠と言われているピアニストのアレクセイ・リュビモフが昨年の暮れに京都の法然院で演奏会を行った。このコンサートは台北でのツアーの帰りに日本に立ち寄り、京都の寺院での演奏会を是非やりたいとの希望が、法然院で実現したものである。この日は非常に寒く演奏者にとっても聴く方にとっても大変だった。演奏の行われた部屋には寺院のもてなしで何台ものストーブが用意され暖をとったが、満員の聴衆はリュビモフの心にしみる演奏に気持ちも身体も温かくなって行った。この日の聴衆は京都の人だけでなく、神戸、大阪、岡山、東京からこの公演を待ちわび、聴きに来ていたのが印象的だった。主催したMSC Young Artists Fund はロンドンを中心に主として小ホールでのコンサートを開催しているNPOである。毎回演奏会の後に主催者が用意したシャンパンで演奏家と交流するのが特徴である。この日のプログラムはモーツァルトの「ピアノ・ソナタK.311」と「K.457」、シューベルトの４つの「即興曲」、C.P.E.バッハの「ファンタジー」。C.P.E.バッハは譜面を用いての演奏だった。使用ピアノはカワイ・ピアノのSHIGERU KAWAIで、このピアノが気に入ったようだった。演奏会の翌日は京都の寺院を廻り、南禅寺では庭園に興味と関心を抱き、いつまでも瞑想にふけっていた。また次回の来日には自身の室内オケを率いて来る構想もあるという。期待したいと思う。

　 　

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